2010/09/12

影踏み


[ 影踏み : 横山 秀夫]

深夜の稲村家。
深夜の寝静まった民家から住民に気取られず盗みに入るノビ師の真壁修一は、そこにいた。
進入した夫婦の寝室で、稲村家の妻に通報され、逮捕されてしまう。

しかし、真壁は違和感を感じていた。

女は俺の物音に気づいて起きたんじゃない。

あの時、女はすでに起きており、夫に対し殺意を抱き火を放とうとしていたはずだ・・・

刑務所に服役して二年、ようやく出所を向かえ、真壁はあの時感じた疑問を調べるために、稲村家を調べ始める。




主人公である真壁修一は、自分の内にもう一人の心を持っている。

それは、母に焼き殺された弟、啓二である。

そのため、逮捕された日に遭遇し、火を放とうとしていた稲村家の妻と、弟を焼き殺した母を重ね、執拗にその女の行方を探ろうとする。



この作品の主人公の真壁修一は、なんといってもストイックでかっこいい。

ノビ師としての能力は一流。冷静且つ大胆で繊細な行動。

やろうと思えば人並み以上の生活も送れるだけの能力はあるのに、弟を死なせたあまり、自分の幸せを放棄する生き方をしてしまう不器用さ。

謎にせまるミステリーの面白さもあるが、真壁修一のストイックなかっこよさ、そしてストイックからこその人付き合いの不器用さが起こす切なさがたまらない。